2025.05.01 CASE INTERVIEW

米どころ北陸を代表する米心石川が冷凍市場へ本格参入し、1年で売上は5倍成長。冷凍技術でお米の可能性を広げる

米心石川は、日本の米文化を支える米飯企業です。伝統的なお米の販売だけでなく、炊飯部門を強化し、2022年から冷凍食品事業に本格参入。当初は緩慢冷凍での試験運用でしたが、さらなる品質向上と生産量拡大を目指し、最先端の特殊冷凍機「アートロックフリーザー」を導入しました。これにより、お米の美味しさをそのまま閉じ込めた高品質な冷凍食品の製造が可能に。国内外からの需要が高まる中、米心石川のお米へのこだわりと冷凍技術が掛け合わさり、お米の可能性を広げています。炊飯部の河村氏に、冷凍機導入の前後の成果や展望をお聞きしました。

冷凍事業の本格参入に向けた品質向上・生産量拡大を目的にアートロックフリーザーを導入

ーーーー冷凍機を導入した背景を教えてください

米心石川は、日本の米文化を支える企業として、年間売上約100億円の米飯事業を展開しています。主に「米穀部」と「炊飯部」に分かれ、売上比率は約8:2。私が所属する炊飯部では、3年前(2022年)に冷凍事業を新たに開始しました。当初は緩慢冷凍で試験的にスタートし、品質向上と生産量の拡大を目指して最新技術の特殊冷凍機「アートロックフリーザー」を導入。本格的な事業化へと舵を切りました。

一つひとつ丁寧に製造されている米心石川のキンパ

ーーー主力商品と冷凍技術の効果を教えてください

現在、米心石川の冷凍商品の主力は韓国風海苔巻き「キンパ」で、売上の50%を占めています。他にも、カレーライス(30%)、焼きおにぎり(10%)、米粉のマフィン(10%)を展開。ここ一年で商品が拡充されました。カレーライスは、ルーとご飯が一体化した状態で冷凍していて卸先でも人気の商品です。品質面では、アートロックフリーザー導入後、特にご飯の品質が向上。従来の緩慢冷凍では避けられなかった「白蝋化」が大幅に軽減され、ふっくらとした食感がそのまま維持されるようになりました。

米心石川のキンパ(冷凍)
米心石川のキンパ(解凍)

一日の製造量は、キンパ約800本、カレー約400パック。現在の生産サイクルは1回ですが、今後は2回転させることで、さらに生産能力を高める計画です。省力化を進めるため、シーラーや自動充填機の導入も検討中。生産効率を向上させながら、より多くのお客様に高品質な冷凍食品を届ける体制を整えています。

冷凍事業の売上は1年で5倍に成長。来年度は売上1億を目指す

ーーー冷凍事業の成長と今後の展開を聞かせてください

冷凍事業の売上は急成長しており、炊飯部の売上20億円のうち、冷凍食品は昨年度5000万円です。割合でみると2.5%ですが、前年比でみると500%(5倍)成長を記録。今年度は1億円を目標に、さらなる拡大を図ります。

米心石川はカートイン式の大型機ART-20RWを導入。現在は1回の投入で1日の製造分を凍結している
凍結後のキンパ

また、小売店・飲食店への卸販売、さらには海外輸出にも積極的に取り組んでいます。特にアジア圏を中心に展開を進める計画で、すでにイギリスやウクライナにもサンプル提供を行いました。おにぎりや寿司など日本食は世界でも評価が高く、国産のお米を使った高品質な冷凍食品が求められていることを実感しています。冷凍で品質が変わらなければより喜ばれるでしょう。会社としても、国内卸だけでなく海外輸出は期待されている部分です。

ーーーOEMの委託製造もされていますか

OEM製造の相談も増えています。「シャリ玉を作ってほしい」「オリジナルのカレーのルーがあるから、それと合わせて冷凍カレーライスにしたい」といった要望に応え、冷凍技術を活かした連携が進行中です。アートロックフリーザーの導入ユーザーからも何度かご相談いただきました。私たちも手探りで進めているので、それらの相談は歓迎です。デイブレイクさんからの紹介は、「冷凍技術を活用して高品質な商品を届けたい」という共通の想いががベースにあるので、安心して連携できます。

米心石川で製造しているカレー(手前:冷凍、奥:解凍)

米不足の昨今、ロスを減らすことにも目を向けるべき。米不足への冷凍の貢献性

ーーー昨今の米不足や価格の高騰に対して冷凍が貢献できる可能性はありますか

炊飯部で販売している商品は、日配品(デイワン商品)です。消費期限の短いこれらの商品と異なり、冷凍は廃棄ロスを大幅に削減できるため、持続可能な食の未来にもつながります。「お米がない」と騒がれていますが、ロスを減らすことにも目を向けるべき。昨今の米不足や価格高騰に対して、冷凍技術は大きく貢献すると思います。

石川県のお米の良さを再発見し、その魅力を世界に届けたい

ーーーー石川のお米の魅力をもっと伝えていきたいという気持ちはありますか

石川県のお米の良さを再発見し、その魅力を世界に届けることを、米心石川は目指しています。石川には冠品種の「ひゃくまん穀」があり、冷凍商品にもこの品種を使っています。大粒で冷めても美味しく、粘りが強い特徴があり、冷凍してもその魅力が損なわれないので、もしかすると「ひゃくまん穀」が冷凍と相性がよいのではないかと検証中です。

冷凍に向いているエビデンスが取れれば、冷凍品を作りたい企業に卸すことができ、新しい商圏開拓に繋がるかもしれません。農家さんにとっても、そういったお米の新しい価値や魅力を見える化すると、励みになります。農家さんに喜んでもらい、農家さんが潤うような経済圏を作っていくことは、日本の文化を支えるために必要なことで、お米の企業として自分たちが大切にすべきことです。

キンパ製造の様子。沢山の具材が盛り付けられている
米心石川の冷凍商品(キンパ、カレーライス、米粉マフィン)

アートロックフリーザーは、とにかく見た目がかっこいい。それが決め手の大部分ではありませんが、どうせならスタイリッシュがいいですよね。食品機械は野暮ったい見た目のものが多いですが、デザインも先進的で、現場のみんなもワクワクしながら製造しています。アートロックフリーザーの導入は、米心石川にとって食の可能性を広げる大きな一歩です。これからも、冷凍技術を駆使しながら、より多くの人々に日本のお米の美味しさを届けていきます。

プロフィール

  • 企業名:株式会社米心石川
  • 代表:代表取締役社長 寺田吉浩
  • 住所:石川県金沢市
  • 事業内容:米穀事業、炊飯事業
2025.05.01 CASE INTERVIEW

米どころ北陸を代表する米心石川が冷凍市場へ本格参入し、1年で売上は5倍成長。冷凍技術でお米の可能性を広げる

米心石川は、日本の米文化を支える米飯企業です。伝統的なお米の販売だけでなく、炊飯部門を強化し、2022年から冷凍食品事業に本格参入。当初は緩慢冷凍での試験運用でしたが、さらなる品質向上と生産量拡大を目指し、最先端の特殊冷 […]

2025.04.29 CASE INTERVIEW

海の環境変化に立ち向かい、海外市場を開拓。築地老舗仲卸「山五商店」が挑む、穴子の冷凍ビジネスとグローバル展開

創業80年を超える老舗仲卸「山五商店」は、築地を拠点に全国各地から穴子や旬の魚を集め、大手ホテルや高級寿司店、天ぷら専門店へと鮮魚の卸事業を展開。特に「煮穴子」に定評があり、その質の高さと確かな目利きで、多くのプロの料理 […]

2025.04.13 CASE INTERVIEW

冷凍は「保存」から「価値を高める技術」へ。浜松の魚屋がはじめた、新しい魚の届け方

静岡・浜松で地元の人々に愛される魚屋「サンフィッシュ木野」。新鮮な地魚を扱うこの店が、冷凍技術アートロックフリーザーを導入し、新しいステージに踏み出しました。店頭の人気商品「マグロメンチ」を皮切りに、冷凍の可能性を追求。 […]