ゴミ処理施設や半導体装置のメンテナンス、非常用発電機の設置など、インフラを支える技術で事業を展開してきた株式会社シーエープラント。同社が3年前に立ち上げたのが、食品事業です。背景にあるのは、京都の農家を支えたいという想いと、規格外野菜の有効活用という社会課題。特殊冷凍機「アートロックフリーザー」を導入し、商品開発から販路拡大、海外展開を進めています。「農家支援型食品事業」に冷凍技術がどのように貢献しているのか、食品事業責任者の中江史剛氏に伺いました。
ーーーーシーエープラントの事業内容について教えてください
当社の基幹事業はプラント関連で、ゴミ処理施設の設備調整や試運転、半導体製造装置のメンテナンス、非常用発電機の設置などを手がけています。その一方で、3年前に新規事業として食品事業を立ち上げました。京都産の野菜を使った加工食品の製造・販売を行っています。
ーーーー食品事業をはじめられた背景やコンセプトは?
食品事業のコンセプトは「農家さん支援」です。農業の現場では、収穫される野菜のうち約3割が規格外と言われていますが、そのうち市場に出回るのはほんの一部で、大半は廃棄されてしまいます。理由は二つあり、一つは、規格外品を安く売ると正規品のブランド力が下がってしまうこと。もう一つは、人件費の問題です。規格外を収穫・選別・袋詰めするコストが販売額を上回ってしまうため、結果的に廃棄せざるを得ない状況が生まれています。そこで私たちは、規格外品を選別不要で「何キロいくら」という形で仕入れる方式にしました。農家さんは出荷の手間がかからず、新しい収益機会になります。A級もB級も関係なく正規の価格で購入し、プリン、ジャム、スープの加工食品として新たな価値をつけて流通させる。これが農家支援につながると考えています。
ーーーー農家さんの反応はいかがですか
とても喜んでいただいています。規格外品から収益を得られるという点だけでなく、例えばトマト農家さんは、自分たちでは加工品を作れないけど、私たちがジャムやプリンに仕上げると感激されます。自分たちのトマトが商品化される姿を見て誇らしく感じていただけるようです。直売所で販売したいと言われることも増えました。
ーーーーアートロックフリーザーを導入された経緯を教えてください
もともとスイーツ系商品は冷凍流通が多く、急速冷凍は必須でした。いろいろ調べる中で、品質保持に優れたアートロックフリーザーにたどり着きました。特にうちのプリンは一個950円という高単価の商品です。品質を落とさず冷凍できることが絶対条件。アートロックは野菜の味がしっかりと残り、離水が少ないという点が決め手でした。
ーーーー冷凍技術をどのように活用されていますか。また、導入後、作業効率や品質管理の面で変化はありましたか
主力商品のプリンの冷凍と、季節野菜の長期保管、スープの粗熱取りに冷凍技術を活用しています。プリンの冷凍は、高い品質を維持したまま賞味期限を延ばすことと販路を広げることが目的です。今後はチーズケーキやスイートポテトなどの新商品も計画しており、百貨店やスーパー、道の駅、お土産物屋への販売を計画しています。
また、プロモーションにおいては、野菜を使ったジャムやプリンは珍しいので、まず食べてもらうために、展示会や試食販売を重視しています。実際に口にすると「野菜の味が濃い!」と驚かれる方が多いです。加えて「廃棄ゼロを無理なく実現している」こともアピールし、販路開拓につなげています。食品ロス削減を掲げている以上、自社が廃棄を出してしまっては意味がありません。冷凍技術はまさに事業理念を支える存在です。
野菜の長期保管は、例えば今の季節ならトマトをザク切りにして急速冷凍し、真空保存。調理する時に解凍し、ペーストやスープに仕上げます。下処理した野菜を冷凍ストックしておけるので、季節を問わずスープが提供できるようになりました。スープの粗熱とりは、時間が短縮されて作業スピードが格段に上がりました。冷却が早いので菌のリスクも減り、衛生面でも効果が大きいです。
ーーーープリンの冷凍はの品質はいかがでしたか
最初の試験ではうまくいきましたが、実際の製造では隆起がしばしば見られました。そこで蒸し方や温度を調整して改善し、今ではほとんど起きません。もし多少残っても解凍すれば気にならないレベルです。また、スイーツの賞味期限は冷凍でも1~2か月が一般的ですが、当社のプリンは半年間冷凍しても味がほとんど変わらないことを確認しています。野菜本来の味わいを大事にしているので、冷凍の中でも高度な技術を選択してよかったです。
ーーーー基幹事業との連携もあるのでしょうか
ありますね。当社は、アメリカでシェアナンバーワンのガス発電機の日本の総合代理店です。その発電機は、スーパーや病院、高齢者向け施設、道の駅など、「停電してはいけない場所」に設置されます。そうした施設にプリンやジャムを紹介して販売いただくなど、連携を進めています。基幹事業で築いたネットワークを食品事業にも活かせるのは当社の強みです。
ーーーー今後の事業展望について教えてください
まずは収益化。食品事業は来期から黒字化の見込みです。その先は、OEMと海外展開を進めます。当社には、パウダー加工、レトルト殺菌、そして冷凍加工の技術が揃っています。それらの機器を活用してOEMを受託する計画です。既にジャムのOEMを受けており、ラーメン店向けの冷凍チャーハンなどの案件も進んでいます。
海外輸出も視野に入れており、すでにタイへのジャム輸出が決定しています。当社は発電機事業でタイに拠点を持っているため、商談が進みやすいんです。日本の食品は現地で高く評価されるため、大きな可能性を感じています。生鮮品の輸出には高いハードルがありますが、冷凍であれば輸出のハードルが下がり、展開しやすい。冷凍技術は輸出拡大の大きな助けとなっています。
農家さんを支援しながら食品ロスを減らし、消費者に京都の野菜の美味しさを届けることが私たちの目標です。そのために冷凍技術を武器に、国内外で販路を拡大していきたいと思います。
ゴミ処理施設や半導体装置のメンテナンス、非常用発電機の設置など、インフラを支える技術で事業を展開してきた株式会社シーエープラント。同社が3年前に立ち上げたのが、食品事業です。背景にあるのは、京都の農家を支えたいという想い […]
1日に3万食の弁当を製造・出荷する株式会社浜の家。給食や惣菜を手がける中で、同社は新規事業の開拓を目的に急速冷凍機「アートロックフリーザー」を新たに導入しました。4台の冷凍機を設置し、冷却・冷凍と多用途で稼働する設備とし […]
京都・京丹波町の特産品「京丹波栗」の焼き栗で毎年行列をつくる京丹波栗工房が、2025年夏に特殊冷凍機「アートロックフリーザー」を導入しました。これまで9〜12月限定販売だった焼き栗を、鮮度をそのままに通年提供できる体制へ […]