2025.11.07 導入事例

弾力が魅力のかまぼこの食感を再現し、製造量は2倍以上に。揚げたて冷凍で、人手不足社会に応える商品開発にも挑戦

創業120年、北海道の魚とともに歩んできた丸一土井水産の歴史

ーーー丸一土井水産の事業の歩みについて教えてください。

創業明治38年で、今年で120周年を迎えます。二代までは魚の仲買業、三代目からニシンや数の子、たらこの加工業を始めました。当時、札幌の中央市場が開設された頃で、祖父が小樽から三輪車で商品を届けに行っていたそうです。昭和50年頃になると200海里問題が起き、日本近海の漁場が狭められて原料が減少。魚の値段も上がると予測し、冷凍食品の取り扱いを始めました。最初は大手メーカーのOEMを受けていましたが、やがて近海の魚に絞って北海道のホッケやすけそうだらを使った自社のフライ製品を作るようになりました。

小樽の老舗かまぼこ店の味を引き継ぐ。時代に即した新しい魚の楽しみ方を提供

ーーーー新しい事業として「かまぼこ」を始められたきっかけは?

温暖化の影響で魚の仕入れが不安定になり、「次の一手」を考えていた時、昔から付き合いがあった近所の老舗かまぼこ屋さんが閉店するという話を聞き、その味を継がせていただくことになりました。ご夫婦で営む、こだわりがあって、昔ながらの手作りの味が地域に愛されるお店。そこに社員が3年間すり身のすり方を学ばせていただき、かまぼこの事業が始まりました。

伝統の味を受け継ぐ目的だけでなく、時代の変化に即した形で、魚を美味しく届けたいという想いもありました。今は魚が年々減り、限られた資源をどう守っていくかが大事なテーマになっています。たとえばホッケフライだと、3枚おろしにする時点で歩留まりが47%ほどになりますが、すり身にすればでんぷんや野菜を加えることで110%くらいまで戻せる。魚を無駄なく使って、子どもから大人まで、魚を身近に感じてもらえる食べ方の提案として、「蒲鉾のマルイチ」のブランドを掲げてかまぼこづくりに力を入れるようになりました。

弾力を損なわないかまぼこの冷凍を求めて。アートロックフリーザーとの出会い

ーーーーアートロックフリーザーを導入いただいた背景を教えてください。

工場を移転するタイミングで、生産量を増やすために、効率化と品質向上を両立できる冷凍機を探していました。テレビで冷凍技術の特集を見たり展示会に足を運んだりしながら情報を集める中で、アートロックフリーザーを知り、試してみようと思ったのがきっかけです。

うちのかまぼこは、かじると跳ね返るような弾力が特徴。普通の冷凍機ではこの弾力が失われ“すわって”しまうことが課題でした。でもアートロックで試してみると、食べ比べても分からないほど違いがない。食感がしっかり保たれていて、「お店の味をそのまま届けられる」と判断できたことが、導入の決め手になりました。

品質維持と効率化を両立。生産量は約2倍に

ーーーー導入後、生産効率にどのような変化がありましたか。

かまぼこは現在、毎日約1,200食を製造しています。揚げる前の整形した状態で冷凍して小売店や飲食店に納品し、現地で揚げて仕上げることで、「蒲鉾のマルイチ」の味を再現しています。以前はその日に揚げる分しか作ることができず1日300〜400食が限界でしたから、導入後、生産量は2倍以上に増えました。冷凍状態での保管期間は半年。かまぼこはとても繊細で、原料の魚が獲れた海域や水温によって、すり身にする時の温度が変わります。だからこそ、アートロックの食材に適した凍結環境は相性がいい。品質を維持したまま製造効率を上げられたのは、導入の効果を感じています。

かまぼこの冷凍は全てアートロックを使用し、ホッケフライなどの冷凍食品の製造には、-40℃のプレハブ冷凍庫を導入。1日1万5千食を作るので、効率を重視して製造を支える体制を整えました。現状、70%くらいの稼働率で20%ほど製造量が増えているので、100%稼働すれば35〜40%の増加が見込まれます。

「週6稼働」から「週休2日」へ。現場の働き方にも変化

ーーーー製造現場の働き方にも変化はありましたか。

以前は土曜日もほぼ稼働していましたが、今は平日で全ての製造を終えられるようになりました。土曜日は月1回出勤がある程度で、ほぼ週休2日です。工場で働くスタッフは約20名。休みが取れるようになって、従業員の負担も軽減されました。

市場で食べた「野菜メンチ」を再現。昔ながらの商品に込めた想い

ーーーー商品づくりにアートロックが貢献してることはありますか。

たとえばこの「かまカツ」はかまぼこのメンチカツで、昔ながらの味を再現した商品です。昔はホッケのすり身で作った野菜メンチが市場で売られていて、私も幼い頃によく買ってもらっていました。今はホッケが少なくなったので、すけそうだらを使ってその頃の味を再現しています。エビなども加えられるので汎用性が高く、評判の商品です。こうした店舗で人気の商品の味も、アートロックがなければ再現できなかったと思います。

ーーーーかまぼこを冷凍するにあたり、冷凍用にレシピ調整はされましたか。

冷凍に対しての調整は特に行っていませんが、入れる具材や魚の身質によって、すり身にする段階で水分量を調整しています。例えば、水分が多い野菜を使用する時は水を減らし、魚の身が硬い時は、少し水を多く入れて滑らかにする。すり身に仕上げたものをアートロックで冷凍してもブレることがないので、冷凍に対しての調整は行わなくても十分品質を保てます。

揚げたてを冷凍し、人手不足社会に寄り添う商品開発を

ーーーー今後の展望を教えてください。

主要な卸先であるスーパーのデリカ部門でも、人手不足が深刻な課題です。そこで、そうした課題の解決に役立つ商品として、揚げた状態で冷凍した商品の納品を考えています。アートロックは、揚げた後の冷凍にも強く、電子レンジで温めても衣がサクサクに仕上がります。他の冷凍機では出せない食感で、タラフライなど水分の多い魚でも衣がベタつかない。かまぼこでも何度か試しましたが、自然な食感が保たれました。

とれたての原料や加工直後の段階でアートロックを使うと、その効果がより発揮される。効率化だけでなく、最高の状態を閉じ込められることも、アートロックの価値だと思っています。スーパーにとっては使いやすく、自社にとっても一番美味しい状態でお届けできる。双方に価値を提供できる商品を、アートロックフリーザーの強みを活かしながら生み出していきたいと考えています。

プロフィール

  • 会社名:株式会社丸一土井水産
  • 代表者:代表取締役 土井譲
  • 場所:北海道小樽市
  • 事業内容:水産加工業
北海道FROZEN SUMMITでの土井氏。ここで試食した根室のカニがとても新鮮で美味しく、とれたての状態で凍結することで、よりアートロックフリーザーの技術力が活きることを再認識したといいます。
2025.11.07 導入事例

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