1867年の創業以来、広島県を代表する食材である牡蠣の養殖から加工、飲食店の運営まで、牡蠣に関わるさまざまな事業を展開してきた株式会社かなわ。同社では、冷凍商品の開発を進めるなかで、本社加工場へアートロックフリーザーを導入。さらに2025年には、生鮮牡蠣を扱う加工工場にも追加導入しました。油調済みの「揚げてるカキフライ」をはじめとする商品開発や、店舗向けのセントラルキッチンとしての運用、そして年間を通じた工場の稼働率向上に向けた取り組みについて、取締役 営業部長の三保 雄大様にお話を伺いました。
ーーーーアートロックフリーザー導入の経緯を教えてください。
もともと冷凍商品の製造計画を立てており、そのなかで「揚げてるカキフライ」を作る構想がありました。冷凍需要の高まりや、家庭で料理をする方が減り、特に揚げ物は調理しづらいことなどから、油調済みの商品を提供すれば、ご家庭でも受け入れていただきやすいのではないかと考えたのがはじまりです。そこから、揚げたカキフライをおいしく冷凍するには、どんな冷凍機が適しているのかを検討。3Dフリーザーや液体凍結なども候補にある中で、品質だけでなく、さまざまな商品に活用できる汎用性の高さも含めて、アートロックフリーザーに決めました。

ーーーー導入の決め手を教えてください。
真空包装して冷凍することが向いていない商品を作ろうとしていたので、空冷式の冷凍機を検討していました。生鮮工場にあるトンネルフリーザーを使用することも考えましたが、ラインが長いため、パン粉などの食品の破片が入り込むことによる故障のリスクがあります。その点、食品が飛びにくいアートロックの風の特性も魅力でした。
品質面では、特にドリップの違いを感じます。魚の切り身などを比較してみても、凍結後の状態には違いがありました。職人からすると食べたときに冷凍かなという印象はありますが、凍結スピードやドリップの少なさという点では、いろいろな食材に応用できると感じています。
ーーーー油調済みのカキフライは、サクサク食感をどのように再現されましたか。
「揚げてるカキフライ」は、お店で提供しているカキフライのおいしさを、ご家庭でもできるだけそのまま味わっていただきたいというコンセプトから、揚げたての味や食感を再現することを追求しました。電子レンジで温めると、どうしても牡蠣から水分が出て衣に水蒸気が付着するため、揚げたてのサクサク感が少し失われます。そこで、電子レンジで温めた後にオーブントースターを使っていただく解凍方法を推奨。さらに、衣の食感をお店の状態に近づけるために、解凍時に外へ水分を放出しにくい打ち粉をデイブレイクさんと一緒に研究しました。こうした工夫を重ね、調理、凍結、解凍方法を一つひとつ調整することで、揚げたてに近いサクサク感の再現性を高めています。



「揚げてるカキフライ」は、揚げた後できるだけ早く凍結するようにしています。どうしても待ち時間が発生する場合もありますが、凍結時間は約30分。品質に問題のない段階で素早くストッカーへ移すことで、生産効率とのバランスを取りながら製造しています。1日あたりの製造量は約600パック、6個入りで約3,600個です。
現在は、揚げてるカキフライの他にも、物販商品としてかき入り土手うどん、グラタン、牡蠣とりんごのグラタンの4商品を展開しています。牡蠣とりんごのグラタンは、りんごをソースに加えて焼き上げたオリジナル商品です。りんごは酸化しやすい食材ですが、アートロックで凍結することで、酸化を抑えられていると感じています。


ーーーー販売先はどのような業態ですか。
販売先は、百貨店やギフト、かなわの店舗、オンラインに加えて、牡蠣小屋やバーベキュー場などにも広がっています。屋外などフライヤーがない環境でも、油調済みの商品であれば、電子レンジなどで温めるだけで、お店の味を再現した本格的なカキフライを提供できます。油調済みの商品にすることで、「こういう環境・業態にも卸せる」という新しい発見がありました。こうした屋外での提供や催事売り場なども含め、これまで提供できなかった場所にも、本格的なカキフライだからこそ届けられる可能性があると考えています。

ーーーー物販以外にも、活用されるシーンがありますか。
本社加工場は市内の店舗からも近く、セントラルキッチンのような役割も担っています。店舗で使用する商品の一部をここでまとめて調理し、アートロックで凍結したものを、必要な時に店舗へ輸送。カキフライ用の牡蠣やカレーなどにも活用しており、小ロットの商品にも対応でき、必要な分だけ柔軟に冷凍できるところは助かっています。

2025年には、生鮮牡蠣を扱う加工工場にもアートロックフリーザーを追加導入しました。生鮮牡蠣を1日500~600kgほど大量に凍結する工程にはトンネルフリーザーを使用し、加工量が少ない商品や小ロットでの冷凍にはアートロックを活用しています。
生鮮工場にも導入したことで、生産量や商品の種類に応じて設備を使い分け、工場の稼働スケジュールを柔軟に組めるようになりました。例えばスチームオイスターは、これまではトンネルフリーザーで生鮮牡蠣の冷凍が終わった後に、蒸す工程を経た牡蠣を並べて凍結していました。アートロックを使用すれば、スチームオイスターだけを別のタイミングで冷凍でき、商品ごとに製造スケジュールを組めるため、工場全体の効率化につながると期待しています。また、殻付き牡蠣についても、出荷量が少ないタイミングや、一部を出荷しないことになった場合などに柔軟に冷凍できます。こうした小さなロスも積み重なると大きくなるので、必要なときに冷凍できる体制を持つことは、効率化やロス対策につながると感じています。

今回、生鮮工場にもアートロックを導入した背景には、工場の年間稼働率を高めたいという課題がありました。牡蠣は非常に季節変動の大きい食材ですが、私たちは養殖という一次産業だけでなく、牡蠣を加工する二次産業まで自社で手がけています。生産から加工まで一貫して取り組める体制を強みに、冷凍を活用しながら工場の稼働率を高め、生産体制や売上、雇用の安定につなげていきたいと考えています。
冬に水揚げが集中する生鮮牡蠣を冷凍保管し、その原料を使ってカキフライなどに再加工すれば、時期を問わず生産できます。夏場も冷凍原料を活用した商品を製造することで、冬と夏の売上の差を縮め、年間を通して工場を稼働させていくことが理想です。工場は、しっかり動かしながら日々使う方が設備も長持ちしますし、雇用の安定にもつながります。また、新しい加工品を生み出すことは、若い世代にとっても魅力のある仕事づくりにつながるかもしれません。
ーーーー今後の展望を聞かせてください。
今後は、本社工場と生鮮工場それぞれの特性を活かしながら、うまく連携していきたいと考えています。生鮮牡蠣を扱う工場では大量生産、本社工場では手間をかけた商品づくりというように、役割を分担しながら、冷凍原料や設備を有効活用することで、年間を通して工場がしっかり動く体制をつくっていきたいです。
その上で、お弁当やEC向けの商品などもさらに増やしていきたい。広島駅にも店舗がありますので、そこで販売できるような商品づくりにも取り組みたいと考えています。他にはない、かなわならではの魅力をどう出していくか。牡蠣へのこだわりを大切にしながら、より多くの方に届けられる形をつくり、そうした取り組みが、結果として工場の活性化や雇用の安定にもつながることを目指していきたいと思います。


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