熊本県上天草市で半世紀にわたり養殖業を営む株式会社天草海産。「天草とらふぐ」を主力に、海水で育てる希少な「天草藍うなぎ」や「黄金ヒラメ」など、独自の養殖に取り組んでいます。同社の特徴は、魚を育てるだけでなく、出荷先のニーズに合わせて活魚から冷凍加工品まで幅広く対応していること。約13年前に特殊冷凍機を導入し、その後、ふるさと納税の需要拡大を背景にアートロックフリーザーを導入しました。若旦那の太田雄三様に、養殖場を案内していただきながら、魚の育て方や品質へのこだわり、冷凍技術の活用、そして今後の展望についてお話を伺いました。

ーーーー養殖業の歴史について教えてください。
天草海産は、養殖業を始めて半世紀になります。最初はクルマエビとヒラメの陸上養殖からスタートしました。時代の変化と求められるニーズに合わせ、どのような魚が養殖できるか挑戦を続け、とらふぐを主力に、海水うなぎへと事業を広げてきました。うなぎに挑戦したのは、コロナ禍でとらふぐだけでは厳しくなり、もう一つの柱が必要だと考えたことがきっかけです。天草の海の恵みを生かし、差別化を図るため、あえて人工的な加温設備を導入しない、四季を感じた海水でのうなぎ養殖を、手探りで取り組んできました。
ーーーー海水うなぎの養殖場について教えてください。
一つの水槽に約6,000匹、全体では約20万匹を養殖しています。一般的なうなぎは淡水で育てますが、ここは海水です。徐々に塩分濃度を上げながら慣らしていきます。失敗も重ねましたが、ここ2〜3年で、しっかり成長させられるようになってきました。育成期間は1年半から2年。時間がかかる分、病気やランニングコストなどのリスクもありますが、品質と希少性が価値につながっています。海水うなぎは流通するうなぎの1%以下と大変珍しく、天然うなぎの代わりを探していた飲食店やミシュラン獲得店などにも選んでいただいています。


「天草藍うなぎ」という名前には、海水うなぎ特有の藍色がかった体色と、「魚のゆりかご」と言われる、産卵の場所である「藍の天草」の海の恵みに育てられたという背景を込めています。練り餌も餌を練り機に入れて40秒と出来上がりを徹底し、魚の様子を見ながら人が給餌。水は1日に約12回転させ、清潔な環境を保っています。泥抜きをしなくても臭みが少なく、いつでも出荷できることも強みです。
とらふぐは出荷まで約1年半から2年かかります。健康に育てるために歯を切る作業が重要で、出荷までに5回ほど行います。従業員には「自分の赤ちゃんの爪だと思って扱ってほしい」と伝え、握り方一つにも気を配ります。出荷前には100トンの水槽を80基備え、全国の大手チェーン店などへ提供。調子を崩した魚を回復させるためのリハビリ水槽も設け、一匹一匹を大切に育てています。


こちらは「黄金ヒラメ」です。ヒラメは生息環境によって体色が変わる魚で、1年ほどで800gから1kgまで育ち、主に大阪方面へ卸しています。全国的に品薄で、貴重な商材です。


出荷は活魚車を使い、品質を保ちながら遠方まで届けます。輸送後もお客様から魚の状態を聞き、次の出荷に生かす。魚を届けて終わりではなく、その後のやり取りも大切にしています。



赤潮や地震などもあり、自然相手なので毎年同じようにはいきません。赤潮が発生した際には、まず餌止めするとともに、海水を掛け流している場合は、赤潮の流入を防ぐために海水の供給を一時的に止めることもあります。これまでには、ウイルスの影響でエビが全滅したり、停電への備えが十分でなかった頃にヒラメが全滅したりした経験もありました。そうした困難を乗り越えながら、長年の経験が、日々の魚の管理や不測の事態への備えに生かされています。
ふるさと納税に参入する際、自分で育てた魚を一級品だと自負しているからこそ、冷凍で流通させるときにも、もう一つ差別化できないかと考えていました。約13年前に3Dフリーザーを導入し、エビの冷凍でも品質を確かめました。ドリップが少なく、エビの血液が黒くなりにくいことにも驚きましたし、可能性を感じました。
その後、ふるさと納税の年間売上が1億円を超えるほどまで拡大し、従来の小型機では生産が追いつかなくなったことを受けて、2019年にアートロックフリーザーを導入しました。導入の決め手は、信頼するデイブレイクの木下社長の製品に対する熱い想いです。自信を持って製品を勧めてくれる姿に心を動かされました。今でも木下社長が来てくれると心が躍りますし、同じ方向を向いて歩む仲間だと感じています。

ーーーー冷凍商品は、どのように活用されていますか。
とらふぐは、身欠きや切り身などに加工してアートロックで凍結します。二枚扉の機械なので、作業を分けながら効率よく運用できるのも助かっています。取引先の飲食店やホテルには、活魚だけでなく冷凍商品も多く利用していただいています。以前、とらふぐの冷凍サンプルを大手すしチェーン店へ提案したところ、高く評価していただき、夏のフグフェアにつながったことがありました。旬の時期以外にも、冷凍だからこそ販売機会をつくれた事例です。



冷凍食品に対する認識も、この20年ほどで大きく変わりました。以前のように「冷凍はおいしくない」という考え方ではなく、冷凍も一級品として価値を届けられる時代になったと感じます。そうした変化には、デイブレイクさんをはじめ、冷凍技術を支えるメーカーの努力もあると思います。
お客様が刺身にしたいのか、鍋にしたいのか、それぞれの要望に合わせて活魚から冷凍加工品まで幅広い商品を提案できることが、うちの強みだと思います。「そこまでやってくれるのか」と驚かれることも多々あるので、そうした取り組みを継続しながら、お客様のニーズに応えていきたいです。海水うなぎも、6年目にしてようやく軌道に乗ってきましたし、次の商材にも挑戦したい。まだまだやってみたいことはたくさんあります。
一方で、ふるさと納税を取り巻く環境も変わってきています。以前は高級品を返礼品として選ぶ方も多かったですが、今は生活必需品を選ぶ方も増えてきています。制度の変化も見据えると、これまでと同じ商品だけでは、今後も選ばれ続けることは難しくなるかもしれません。これから先を見据えて、新しい商材を開発していく必要があると考えています。


全国有数のふぐの産地として売上を伸ばしていくことはもちろん大切ですが、それだけでなく、現場で培ってきた経験から生まれた育成の仕組みや、海水でうなぎを育てるといった天草ならではの挑戦、養殖の可能性を広げようとしていることを、多くの方に知っていただきたいと思っています。実際に養殖場へ足を運んでいただくことで、魚が育つ環境や私たちのこだわりを知ってもらい、新たな取引につながることもあります。
これからも、今いる魚たちを大切に育てながら、天草ならではの陸上養殖の強みを生かし、デイブレイクさんの冷凍技術も掛け合わせて、新しい商品や販売の可能性を探っていきたいです。「天草の養殖魚が持つ価値をさらに高め、旬や流通の制約を超えて、より多くの方に届けていきたい」と、若旦那は笑顔で語りました。

太田代表(若旦那)は、広大な養殖場を一部屋ずつ案内しながら、魚への温かい想いを聞かせてくださいました。もともとは老人ホームに勤務されていたという、異色の経歴を持つ太田様。社会福祉士、精神保健福祉士という国家資格に加え、昨年は心理カウンセラーの資格も取得されています。その経験を生かしながら、魚たちを健やかに育てたいという愛情。社員の悩みや不安に寄り添い、働きやすい職場をつくりたいという経営者としての覚悟。そして、養殖業の未来を守り、発展させていきたいという使命感。お話を伺うなかで、その一つひとつが伝わってきました。こうした高い志が、おいしい商品づくりにつながっているのだと思います。
そして、アートロックフリーザーを導入される皆様には、こうした深い想いが共通していると感じます。大切に育てた魚や食品の価値を、冷凍技術を通じてさらに高めて可能性を広げていく。デイブレイクとしても、こうした挑戦を続ける皆様の力になりたいと、改めて感じる取材となりました。太田様、ありがとうございました。
熊本県で、地元の名物や食材を生かした惣菜の製造を手がけるイケダ食品株式会社。佃煮など日持ちする商品の製造を中心としてきた同社では、商品ラインナップの新たな柱として冷凍食品に着目し、アートロックフリーザーを導入しました。導 […]
福井県で精肉加工・販売を手がける高島屋株式会社。鹿児島黒牛を使った高級肉おせちの製造をきっかけに、アートロックフリーザーを導入しました。それまで12月に集中していた生産を前倒しすることで、繁忙期の売り逃しを解消。高級和牛 […]
社員への福利厚生として始まった弁当の提供をきっかけに、規模拡大に伴い専用キッチンを新設し、事業を担う会社として立ち上げられた株式会社ひのっ子キッチン。現在では、弁当やスイーツの製造に加え、グループ会社向けイベントの手土産 […]