特殊冷凍ソリューション事業を展開するデイブレイク株式会社は、九州の食産業発展に向けた冷凍技術の可能性を探るべく、2/25(火)に事例交換・試食会を開催。冷凍技術を活用して急成長を遂げた牡蠣生産者「新栄丸」(大分)と老舗うなぎ店「うなぎの柳川」(熊本)をゲストに招き、事例を紹介するとともに、九州の食の未来について議論しました。試食会では、アートロックフリーザーを使用した最新の冷凍食品を提供。自由交流は新たなビジネスの可能性が広がる場となりました。
はじめに、デイブレイク代表の木下昌之から、デイブレイクの事業モデルや最新トピックスを紹介。ここ数年のアートロックフリーザーの導入状況や、冷凍寿司の海外展開などを紹介しました。
続いて、アートロックフリーザーで凍結テストを実施しました。寿司、だんご、フルーツの3種類の冷凍を実践し、真空を施さずはだかで凍結できることや、食材にダメージを与えない冷凍機の特性を紹介。従来の急速冷凍は、強い冷風が食材を乾燥させるリスクがありますが、アートロックフリーザーはその問題をクリアし、食材の品質を最大限に保つことができることを説明しました。
ここからは、ゲストの登場です。冷凍技術で事業を急成長させた牡蠣生産者「新栄丸」(大分)、鰻の老舗名店「うなぎの柳川」(熊本)から、冷凍技術を活用した取り組みを紹介いただきました。
新栄丸は、大分県佐伯市・大入島で真牡蠣養殖を最初に手がけ、ニュージーランドの先進的なシステムを導入することで高品質な牡蠣の養殖に取り組んでいます。これまで冷凍加工は外部委託しており、「往復1時間以上かかる輸送コストと時間ロスが大きな課題だった」といいます。そこで導入したのがアートロックフリーザーです。「前日に水揚げした牡蠣を翌朝には冷凍できるようになり、今では1人で1日2000~2500個の処理が可能になりました。最適な規格に育ったタイミングで冷凍することで、出荷時期に左右されず品質を維持でき、賞味期限を1年に延ばせるため海外輸出にも対応しやすくなりました」と宮本氏は解説します。
さらに、品質にも大きな変化・驚きがありました。
「他社の冷凍機ではドリップが出て冷凍臭が気になりましたが、アートロックフリーザーでは驚くほど生の状態に近い。飲食店でも『冷凍の方が美味しい』という声が多く、大阪シーフードショーでは来場者の70~80%が冷凍牡蠣を選びました」と、その衝撃の結果を振り返りました。実際、冷凍することで牡蠣の水分が膨張し、身がふっくらと見え、旨味が凝縮される感覚があるといいます。「冷凍は品質を落とすものではなく、むしろ新たな価値を生み出す」と宮本氏は話しました。
熊本市で50年続く老舗うなぎ店「うなぎの柳川」は、コロナ禍をきっかけに冷凍事業に踏み出しました。さまざまな冷凍機を試し、「なかなか自分たちが思い描く仕上がりにならず、妥協できなかった。結果的に1年ほど導入が進みませんでした」と当時を振り返ります。そんな中、熊本県内でアートロックフリーザーを導入している施設で試したところ、「これならいける!」と確信。2023年にセントラルキッチンを設けて冷凍機を2台導入。「見た目がかっこいいので、ガラス張りの工場で製造しています」と、性能だけでなくフリーザーの見た目も評価していただきました。
販売チャネルも多岐にわたり、熊本県内に5台の冷凍自動販売機を設置、自社ECサイトでの販売、さらにゴルフ場や飲食店への卸売も展開。「デイブレイクのラボチームに相談し、『うなぎまん』の開発にも挑戦しました。埼玉の肉まん研究所さんを紹介してもらい、試行錯誤の末に完成。現在は3.5坪の小型店で販売しています」と、新たな商品開発にも注力していることを伝えました。伝統の味を守りながらも、冷凍技術を活用し新たな市場を切り拓く柳川。「冷凍はビジネスの可能性を広げてくれる」と、老舗店の新しい挑戦について仲米氏は意欲を表しました。
2人の冷凍ビジネスを聞いた木下は、「お二人は、九州の冷凍ビジネス成功事例の代表格ですね。牡蠣はアートロックフリーザーによってここまで品質が向上することに、自社の技術ながら感動しました。柳川さんのビジネスモデルも秀逸で、1店舗のうなぎ屋さんから通販、自販機、セントラルキッチン付きのイートインまで多角展開。冷凍技術一つでこれほど事業が発展することに改めて驚かされました」と、感動のコメントを述べました。
トークセッションでは、2つのテーマ「飲食水産業界の課題と冷凍技術の貢献性について」「九州の食の発展と冷凍技術について」について、ゲストの宮本氏と仲米氏、デイブレイク木下、そして会場のみなさんと意見を交わしました。
気候変動と水産業の課題
まず一つ目のテーマ「飲食水産業界の課題と冷凍技術の貢献性について」について、木下から「水産業界は気候変動の影響を大きく受けています。例えば牡蠣なら、伊勢志摩の生産者から『餌の質が悪く、大きく育たない』という話を聞きますが、大分でも同じ課題はありますか」と問いかけると、新栄丸の宮本氏は「夏の水温が異常に上昇している」と深刻な現状を語りました。
「昨年の岩手県では平年より5℃も水温が高く、海の中での5℃の変化は生産量に大打撃を与えます。うちでも昨年夏、小さく育った牡蠣が約20万個へい死しました。冷凍技術を活用することで、成長した牡蠣を最適なタイミングで凍結できるようになり、ロスを大幅に削減できています。一番美味しい時期に保存できることは、業界全体への大きな貢献です」
飲食業界の人材不足と冷凍技術の役割
続いて木下が「飲食業界ではどのような課題がありますか」と話題を振ると、柳川の仲米氏は「職人不足が深刻」と指摘。
「飲食業界では人を増やしたくても人材が集まりません。しかし、冷凍技術を活用すれば、少人数で短時間に大量の仕込みが可能になります。また、うなぎ業界では、シラスウナギの漁獲量が減少し、うなぎの仕入れ価格が高騰する問題があります。不漁の時はシラスが1kgあたり200万~250万円で、土用の丑の時期にうなぎを仕入れようとすると、例年の1.2倍ほどに値上がりします。冷凍技術を活用して繁忙期前に仕入れて保存することで、コストの安定化を図ることができます」と説明しました。
冷凍で美味しくなる理由とは
質疑応答では、「冷凍すると美味しくなるという話がありましたが、その根拠を教えてください」という質問が上がりました。
宮本氏は「現在、牡蠣の旨味成分であるグリコーゲンやグルタミン酸が冷凍でどう変化するのか、検証を進めているところです」と研究の最前線を共有。木下は、「佐賀のPOPLABさんが、フルーツの糖度が上がるという研究をされていますね」とフルーツの事例を紹介しました。
それを受けてPOPLABの担当者は、「紅マドンナや瀬戸内レモンなどのブランドフルーツを冷凍加工しています。特にイチジクやぶどうは、冷凍することで糖度がぐっと上がり、柿はマンゴーのような味になります」と、冷凍がもたらす変化を述べました。
木下は「食材がなぜ美味しくなるのかだけでなく、冷凍機の設定や風の強さが食材との相性にどう影響するかも重要です。今後、さらに『美味しくする方法』を皆様に報告できるよう取り組んでいきます」と締めくくり、冷凍技術のさらなる研究に意欲を示しました。
観光と冷凍技術がもたらす食の広がり
2つ目のテーマ「九州の食の発展と冷凍技術について」では、宮本氏が観光と冷凍技術の関係について述べました。「旅行で九州を訪れた際に、美味しいものを食べたら、それをお取り寄せしたくなるかもしれません。ただ冷凍すればいいのではなく、高品質な冷凍技術があるからこそ、その美味しさを全国に届けることができる。観光業が盛り上がる中で、冷凍牡蠣の飲食店への取引も増えています」
仲米氏も「お店の伝統の味を冷凍で提供できることは、地域の食の広がりにつながる」コメント。「焼く工程はお店とまったく同じで、焼きたてをそのままフリーザーに入れます。通常は粗熱を取ったり、冷やしたりするプロセスが必要ですが、アートロックフリーザーなら熱々のまま冷凍できるので、焼きたての味をそのまま再現できます。菌の繁殖も防げるので、安全性の面でもメリットがあります」と、冷凍加工の工程を説明しました。
質疑応答では、「アートロックフリーザーを導入したものの、まだうまく活用できていない。EC販売を考えているが、どのように販売チャネルを築いたのか」という質問が上がりました。
仲米氏は「冷凍自動販売機と自社ECを取り入れましたが、最初の1年はうまくいかず苦しみました。デイブレイクファミリー会で東京・伊勢丹での催事出店をご紹介いただき、そこで購入された方がリピーターになるなど、徐々に売上が伸びていきました。一気に成功するのは難しいので、コツコツと積み上げていっています」と率直にこれまでの成長を振り返りました。
木下も自社の経験を交え、冷凍食品ビジネスの展開についてコメント。冷凍ビジネスの成功には販売前の整備が欠かせないと強調するとともに、「連携」の大切さを伝えしました。
「我々も国内で冷凍寿司の販売を試みましたが、なかなか利益が上がらないビジネスモデルでしたので、早い段階から海外市場に目を向けました。実際に社員が現地へ赴き、試食していただいたところ、『こんなに美味しい寿司を食べたことがない』と驚かれました。卸先が小売店なのか、飲食店なのか、消費者向けなのかによって解凍方法が異なります。販売戦略を考える際には、まず出口戦略を明確にして、それに合わせたレシピやコールドチェーンの構築を進めることが重要です」
「冷凍ビジネスの確立には、売上創出の前に整えなければならない課題が多くあります。デイブレイクでは、そういった部分のサポートも行っています。4/18には、デイブレイクファミリー会のオフラインイベントを開催する予定です。冷凍ビジネスで売上を伸ばしている企業の成功事例を共有できる場ですので、ぜひご参加いただき、横の繋がりを作っていただけたらと思います」
続いて試食会です。アートロックフリーザーをご活用いただいている以下の商品を提供させていただきました。
生牡蠣とアートロックフリーザーで凍結した牡蠣の食べ比べを実施したところ、「冷凍の方が美味しい!」という驚きの声が多数上がりました。また、うなぎのせいろ蒸しは、ごはんのもちもち感が際立ち、うなぎのおむすびもふっくらとした食感が「冷凍とは思えない」と高評価。冷凍フルーツも甘味や風味が損なわれず、新鮮さを感じるとの意見が多く寄せられました。最新の冷凍技術によって、食品・食材本来の美味しさを楽しめることが伝わる試食会となりました。
参加者のアンケートでは、75%がとても参考になったと回答。品質の良さや冷凍ビジネスの可能性について、沢山のコメントが寄せられました。
参加者のコメントを一部ご紹介
「食品ロスだけでなく、美味しさまで担保されていて感動しました」
「牡蠣もフルーツも鰻も全て美味しかったです。今後の事業展開に活かしたいと思います」
「食品の保存状態や使い方だけでなくその後の販売方法や事業拡大の話を聞けたのがよかった。私たちも、未来のことを考えて製造に活かしていきます」
「牡蠣が生よりアートロックの方が食べやすく驚いた」冷凍技術の発展によって、地域の食文化を全国・海外へと広げるチャンスが生まれ、観光業との相乗効果や、飲食店が伝統の味を守る手段としても、その可能性は広がっています。こうした期待が膨らむ中、参加者からは熱い視線が寄せられ、冷凍技術がもたらす新たな食の可能性に大きな関心が集まりました。デイブレイクは、今後も特殊冷凍ソリューションを提供し、地域の食の課題解決と発展に貢献してまいります。
当日の模様を九州朝日放送にご取材いただきました。こちらの記事から動画をご視聴いだけますので、よろしければご覧ください。
https://kbc.co.jp/news/article.php?id=14722751&ymd=2025-02-25
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