大阪・東部中央卸売市場で仲卸業を営む泉州屋が、2024年に本格始動した冷凍加工事業。急速冷凍機「アートロックフリーザー」を導入し、国産フルーツや鮮魚を用いた高品質な冷凍商品を次々と開発しています。小売・外食・海外輸出まで視野に入れた同社の取り組みについて株式会社泉州屋 特販部次長の生島秀郎様にお聞きしました。
ーーーーアートロックフリーザーを導入された背景を教えてください
大阪・東部中央卸売市場で果物、野菜、水産物の仲卸を手がける泉州屋は、2024年4月に冷凍加工専用の新工場を稼働させました。同時に導入されたのが、デイブレイクのアートロックフリーザー。数多くの冷凍設備を比較検証する中で、品質・処理速度・製造量・機能性のすべてにおいてバランスが良く、導入を決断しました。泉州屋では、従来の仲卸事業に加え、冷凍加工という新たな柱を打ち立てることで、供給の安定化、商圏の拡大、そして持続可能な仕入れ体制の構築を目指しています。
ーーーーアートロックフリーザーをどのように活用されていますか
冷凍加工する主な原料は、季節ごとに仕入れる国産フルーツ。春はイチゴ、夏はマンゴー・ゴールドバレルパイン・白桃、秋にはシャインマスカット等の葡萄、冬には柑橘類など、年間を通じて多様な果物を扱っています。アートロックフリーザーにより、解凍後も生に近い風味やみずみずしさを保つことができるため、卸先からも好評で、スーパーの冷凍売場や飲食店での採用が広がりつつあります。さらに、手作業での加工を活かし、量販店のPB商品やニーズに合わせた商品開発にも対応。実際に、あるスーパーでは、リーチインケース3本を泉州屋の商品で展開しています。
冷凍工場の一角では、国産フルーツを使用したマカロンやジェラートなどの菓子製造も進めています。正規品として流通できない規格外フルーツをピューレ状に加工し、付加価値の高いスイーツとして商品化。規格外品も真っ当な利益を生み出せるようなサイクルを築き、生産者にも還元する取り組みです。国産フルーツの生産量が減少する中、生産者支援にも繋げることを目指して力を入れています。これらの商品は、業務用として既にホテルやパティスリーにも展開されており、品質とストーリー性の両立によって新たな販路を開拓中です。
最近ではOEMの依頼も増加しています。例えば、かき氷用に冷凍イチゴを提供したり、ピューレ加工によるお菓子素材の開発支援など、中ロットで柔軟に対応できる体制が強みです。また、鮮魚を仕入れ、冷凍加工後にホテルに納品する「セントラルキッチンの役割」も果たしつつあります。現場の人手不足を背景に、一次加工のニーズは今後もさらに高まると思います。冷凍技術の活用によって、ホテルや飲食店の仕込み負担を軽減し、調理現場の効率化に貢献できたら幸いです。
果物にとどまらず、水産分野では海外展開を進めており、現在はマレーシアを中心に、ブリや鯛などの鮮魚を下処理後、丸のまま冷凍して船便で輸出しています。現地では「調理風景を演出したい」というニーズもあり、あえて加工を抑えた形で提供。すでに数回の輸出実績があり、1回の売り上げ規模はおよそ1,000万円です。今のところは2、3ヶ月に1度のペースですが、今後はもっと頻度を高めていきたいと考えています。また、展開エリアもマレーシア・香港などを中心に東南アジアでの展開を拡大すべく、現地にスタッフを派遣して開拓を進めています。
泉州屋では、大阪市内800m圏内に仕入市場・冷凍加工工場・出荷センターを集約する「都市型工場構想」を推進中です。このハーフマイル構想により、鮮度保持・物流コストの削減・原料ロスの低減が実現可能となり、訪問バイヤーとの商談から出荷までをスピーディに行える体制を整えています。
ーーーー今後の冷凍事業の展望を教えてください
現在は全体の約8割が果物加工ですが、今後は水産の分野も冷凍加工比率が高まる想定です。特に、フルーツは規格外原料も活用しながら、生産者支援と安定供給の両立を目指しており、水産の海外輸出に関しては、冷凍による船便活用などでさらなるコスト競争力も期待しています。従来の生鮮流通では地理的な制約がありましたが、冷凍という技術を活用することで、東京や海外へと商圏を大きく広げることが可能になりました。実績を積み重ねながら、都市型工場や柔軟な提案力など泉州屋の強みを活かし、今後も冷凍を軸とした事業展開を加速させていきます。
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