瀬戸内海の小豆島で長年にわたり海苔養殖を営んできた江岡水産株式会社が、新たに牡蠣の冷凍事業をスタートしました。近年、猛暑による牡蠣の大量死といったリスクが深刻化するなか、同社が選択したのは急速冷凍機「アートロックフリーザー」の導入です。生に限りなく近い品質を再現できる冷凍技術を活用し、収益の安定化と販売機会の創出、そして牡蠣養殖のリスク低減を目指します。導入の経緯や展望について、代表の松井康之様にお話を伺いました。
ーーーー御社の事業について教えてください。
江岡水産では、何十年にもわたり海苔の養殖を行っています。海苔の収穫は冬場に限られるため、春以降の新たな柱として牡蠣養殖を始めました。牡蠣の漁場は約1kg×500m規模。1個ずつ独立した状態で専用バスケットに入れて海中で育てるシングルシード方式を採用しています。展開する牡蠣ブランド「オリーブオイスター」は、小粒ながらも身が引き締まり、甘さが際立ち、フルーティな後味が特徴です。気候が温暖で海の栄養が豊富な小豆島で育つ牡蠣は、品質の高さに定評があります。
小豆島では、海苔養殖や漁業と並行して牡蠣生産に挑戦する生産者が増えています。そのなかで、他の生産者がまだ取り入れていない新たな戦略を実践したいと考え、今回冷凍への挑戦を決めました。


ーーーーアートロックフリーザー導入の背景を教えてください。
昨年のシーフードショーでアートロックフリーザーを見かけたことがきっかけです。その後、姫路の導入ユーザーの現場でテスト凍結を行い、オリーブオイスター特有のクリーミーな味わいと引き締まった食感、そして後味の甘みがしっかりと保たれていることを確認。さらに他の牡蠣生産者からも「生への再現性が高く、卸先からの評価も高い」という話を聞き、それらを総合的に判断して導入を決めました。
ーーーー現在の販路と冷凍を取り入れた後の計画について教えてください。
生牡蠣の卸先は、豊洲市場の仲卸や首都圏の飲食店など、関東が中心です。賞味期限は出荷から5日間に設定しているため、鮮度を保てる時間が短いことが課題でした。卸先からも「冷凍はないのか」と聞かれることがあり、需要は感じていました。冷凍を活用すれば、新鮮な状態を保ったまま販売地域を広げることができます。流通可能期間を延ばし、地域を広げることが、導入の大きな目的の一つです。


ーーーー近年の環境変化については、どのように感じていますか。
今年、小豆島を含む瀬戸内海では牡蠣の大量死が発生。場所によっては9割が死んでしまうという深刻な被害でした。猛暑による海水温の上昇が影響しているとみられ、例年9〜10月頃に発生する傾向があります。出荷を目前に控えたタイミングで死んでしまうこともあり、生産者としては言葉を失うほど、精神的にも経営的にも大きな痛手です。
自然環境の変化は、生産者の努力だけでは防ぎきれません。アートロックを導入したことで、こうしたリスクへの備えができると期待しています。病気が広がりやすい時期が来る前に水揚げして冷凍ストックしておけば、たとえ身がやや小ぶりでも、出荷機会を確保でき被害を最小限に抑えられます。経営を安定させるための備え。守りの戦略としての意義も、非常に大きいと感じています。


また、三倍体牡蠣(通常の二倍体牡蠣を品種改良した、産卵しない牡蠣)は、産卵による栄養分の消耗がないため、夏場でも身が痩せず、年間通じて出荷できることが特長です。ただし、二倍体牡蠣が多く流通する冬場は価格が下落しやすく、売りづらい面もあります。そこで、その時期に冷凍してストックし、二倍体が出回らない時期に販売できれば、価格も安定させやすくなります。現在は生牡蠣が中心ですが、将来的には販売の約3割を冷凍にしていきたい。将来的には、海外輸出も視野に入れています。
ーーーー今後の展望をお聞かせください。
小豆島で牡蠣の冷凍を本格的に取り入れたのは、私たちが初めてです。同じように自然リスクや価格変動に悩んでいる生産者は多いと思います。まずは自分たちの取り組みを軌道に乗せ、その成果を島内に知らせていきたい。冷凍という選択肢が広がれば、小豆島全体の牡蠣養殖の安定化や販路拡大につながり、小豆島の牡蠣の魅力を全国へ届けられるようになります。
海況の変化という逆境に直面するなかで、冷凍技術は経営を支える備えでもあります。小豆島の牡蠣を守り、価値を新たな市場へ広げていくための取り組みを、これから積み重ねていきます。

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