2026.06.04 導入事例

北海道常呂町の「初ホタテ」を通年流通へ。気候変動によるロス削減と販路拡大を実現した冷凍活用

北海道・オホーツク海沿岸に位置する常呂町。豊かな海に育まれたこの地で、代々ホタテ漁を営んできたのが株式会社カネサ相田です。同社では、これまで市場出荷を中心としてきた事業に加え、3年前からEC販売を本格スタート。自社ブランド商品の展開に取り組む中で、生で届けられる範囲には限界を感じてアートロックフリーザーを導入しました。「初ホタテ」を通年販売する仕組みを構築してギフト需要や飲食店向け販路を広げ、売上は大きく成長しています。冷凍導入の背景からブランドづくり、今後の展望まで、株式会社カネサ相田代表取締役の相田裕康様にお話を伺いました。

「冷凍品は品質が落ちる」の常識が変わった

ーーーー冷凍導入の背景について教えてください。

常呂町はオホーツク海に面した漁業が盛んな町で、私はホタテ漁師の7代目です。これまではホタテを育てて全量を市場に卸す形でしたが、3年前からECを中心とした自社販売を始めました。事業を進める中で、生のホタテを届けられる距離や範囲に限界を感じていた時に、同じ常呂町の先輩漁師の方からデイブレイクさんを紹介してもらったことがきっかけです。

とれたての味を知っている漁師として、冷凍は品質が落ちるものだと思っていました。しかし、アートロックフリーザーで凍結したホタテを食べてみたら、ほとんど生と変わらなかった。これまでの常識を覆すこの体験をきっかけに、新鮮なホタテを全国へ届けられる可能性を感じて、補助金を活用して導入を決断しました。

初ホタテを通年販売へ。冷凍が広げた販路

ーーーー冷凍を活かした取り組みについて教えてください。

「初ホタテ」は、シーズン最初に獲れる3月末頃のホタテです。冷凍在庫を持つことで、初ホタテを全国どこでも通年販売できるようになりました。さらに2025年からは、飲食店向けの業務用卸販売も本格化。飲食店からの評価は軒並み高く、冷凍商品の売上は生とほぼ同等の割合まで成長しています。

ギフト需要に応える、「贈れる品質」

冷凍商品の自社販売では、特にギフト需要に力を入れています。従来の冷凍では贈答品として提案するには品質面で課題がありましたが、アートロックフリーザーの導入により、「大切な人へ贈りたい」と思える品質を維持できるようになりました。また、商品の価値をしっかり伝えるため、デザイナーと協業しながらロゴやパッケージを開発し、ブランドイメージの構築にも注力しています。大規模な設備を持つ企業とは価格では勝負できません。だからこそ、品質やストーリー、見た目も含めて、他と比べられない価値をどうつくるかを常に意識しています。

看板商品「しばれホタテ」が高評価

ーーーー人気商品はありますか

看板商品は「しばれホタテ」です。「しばれ」は北海道弁で「非常に寒い」を意味する言葉。冷凍の魅力をわかりやすく伝えるために名付けました。「しばれホタテ」は、食の専門家が審査する「ジャパンフードセレクション」でグランプリを受賞し、品質面において高い評価をいただいています。オホーツク海の流れが速い海域で育つホタテは、筋肉質でしっかりとした食感が特長です。そのホタテを水揚げ当日に加工・冷凍することで、とれたてに限りなく近い鮮度と美味しさを閉じ込めています。

また、魚介類には、冷凍することで旨味が増す「冷凍熟成」の現象が見られることがありますが、ホタテも、アートロックフリーザーで凍結した方が美味しくなっている感覚です。その価値をより明確にするため、今後は科学的なデータに基づいた検証にも取り組んでいきたいと考えています。

ーーー製造体制について教えてください。

ホタテの貝柱は約40分で冷凍できます。凍結後は大型のプレハブ型冷凍庫で保管。解凍は、冷蔵庫で半日ほどかけてゆっくり戻すと、一番生のホタテに近い状態になります。私自身、普段から生ホタテを食べて慣れているので、以前は冷凍したホタテをわざわざ食べたいとは思いませんでした。でも、アートロックフリーザーで凍結したホタテは、解凍しても生と変わらないくらい美味しい。気づけば、自分でもホタテを食べる量が増えていました。

廃棄ロス削減と利益改善にも大きく貢献

ーーー販路拡大以外に、冷凍が貢献できたことはありますか。

冷凍導入による効果は、販路拡大だけではありません。以前は、初ホタテを扱う際に約2割くらいの斃死ロスがありました。殻にダメージがあるものは、その日のうちに処理しないと弱ってしまいます。現在は、殻付きで売れるものと、弱りそうなものを選別して、状態の良い貝柱のまま冷凍することで、これまでロスになっていた原料を価値ある商品へと転換。廃棄せざるを得なかったものが売上になり、利益率の改善につながっています。自社販売による販路拡大と、約2割あったロスの削減。その両方の効果が重なり、事業全体の売上は導入前と比べて倍近くまで成長しました。

カニやシマエビにも広げ、しばれシリーズ構想も

ホタテだけでなく、今年の3月からは、カニを丸ごと冷凍した商品のEC販売も始めました。アートロックフリーザーで凍結したカニは、カニ味噌の臭みやドリップがなく、生に近い品質を維持できるため、ギフト商品としても評価が高いです。今後は「しばれホタテ」の成功モデルを横展開し、シマエビや牡蠣など、オホーツク海の海産物を「しばれシリーズ」としてブランド化していく構想も描いています。

また、北米では大型ホタテの需要が高く、アジア圏でも、料亭などの高級業態のニーズがあります。冷凍技術を活かして、高品質な状態での海外市場への進出も見据えています。

地域の6次産業化を支える存在へ

近年、気候変動の影響でホタテの斃死率は高まり、原料価格も3年前の約2.5倍に高騰しています。そうした環境変化の中で、冷凍技術には地域の未来を支える可能性を感じています。うちが冷凍品を販売していることを知って、他の漁師さんや農家さんから相談をいただく機会も増えてきました。常呂には本当に美味しい食材がたくさんありますが、鮮度の問題で届けられる範囲には限界があります。今後は自社の商品づくりだけでなく、地域の生産者の流通支援や商品開発のお手伝いもできたらと思っています。常呂町の魅力・価値を広げる6次産業化を、地域全体で進めていけたら嬉しいです。

プロフィール

会社名:株式会社カネサ相田
代表者:代表取締役 相田裕康
所在地:北海道北見市常呂町
事業概要:ホタテ養殖・水産加工・EC販売・業務用卸販売