茨城県笠間市で、地域の特産である栗の魅力を発信し続ける「栗のいえ」。フレンチで培った技術を活かし、独創的なスイーツなどで注目を集める同店は、急速冷凍機「アートロックフリーザー」の導入により、販路拡大と生産体制の強化を実現しています。地域の生産者と連携しながら、ここでしか味わえない価値を磨き続ける取り組みの背景と、冷凍技術がもたらした変化について、代表の竹内孝弘様に伺いました。
ーーーーお店立ち上げの背景を教えてください。
笠間は私の故郷ですが、高校卒業後は料理の修行のため、東京やフランス、マカオなど海外で経験を積んできました。海外から日本を見つめ直す中で改めて気づいたのが、茨城県笠間が栗の生産量日本一である事実です。一方で、その価値がありながら笠間は栗の名産地として賑わっておらず、現状への悔しさを覚えるとともに、地元の資源に可能性を感じるようになりました。
かつては東京での出店が目標でしたが、時代の変化により、地方でも情報や機会にアクセスできる環境が整ってきています。海外で培った技術を地元に還元し、「笠間に来なければ体験できない価値」を提供する。その想いで2021年7月に開業しました。現在で5年目を迎えます。地域の生産者や自治体の方々にも支えられ、今では自ら栗の木を植えるなど、生産にも関わり始めています。


ーーーー人気メニューについて教えてください。
代表的な商品「こぼれモンブラン」は、地元の栗の魅力を伝えるために開発した商品です。現在は商標登録も取得し、この商品のために遠方からも多くのお客様にお越しいただいています。特に40代以上のお客様からの支持が厚く、中には山形から車で訪れる80代のお客様もいらっしゃいます。
また、当店ではモンブランだけでなく、フレンチの経験を活かした前菜のような一皿も提供しています。例えば、春菊のムースやケールのチップス、季節のフルーツを使ったかき氷など、旬の食材を組み合わせた構成です。食材は地域の農家さんから直接仕入れており、営業後に畑を訪れることも日常の一部。こうした関係性の中から、新しいメニューの着想も生まれており、農家さんとコラボレーションイベントも計画しています。

ーーーー冷凍技術を導入したきっかけは何でしょうか。
遠方のお客様にも商品を届けたいと考えたことがきっかけです。主にふるさと納税の返礼品を製造・配送することを目的に、約1年前に急速冷凍機「アートロックフリーザー」を導入。コンパクトなサイズ感と、強い風を当てずに冷凍することで乾燥を防ぐ点が決め手でした。

ふるさと納税は9月〜12月に受注し、1月〜3月に発送します。冷凍技術の導入により、月40件、合計120件規模の出荷にも対応できるようになりました。今後は、Uber Eatsでの冷凍ケーキ販売も計画しています。これまで配送が難しかった「こぼれモンブラン」のような繊細な商品も、アートロックで冷凍することで型崩れを防ぎ、新たな販売モデルとして展開が可能になります。
冷凍ケーキは、ご自宅で冷蔵解凍することで食べたい時に、手軽に楽しんでいただけるところも魅力です。凍結は約1.5〜2時間、解凍は冷蔵で約8時間を目安としています。茨城県主催のイベント「マロンコレクション」でも冷凍ケーキを出品しました。
ーーーー品質面はいかがですか。
従来の冷凍と最も異なるところは、ケーキが乾燥しないことです。フルーツも風味や甘さがほとんど変わらず、品質を維持したまま提供できます。エディブルフラワー(食用花)やハーブ類も試しましたが、見た目や香りの変化はほとんどありませんでした。
こぼれモンブランのような軽いクリームも、配送用には多少形を整える必要はありますが、大きく品質が損なわれることはありません。当初は品質低下を懸念していましたが、実際にはその心配はほとんどなく、柑橘系のフルーツも含め、幅広い食材で活用できると感じています。最近は消費者の冷凍食品への評価が高まり、高品質な冷凍ケーキは、十分に受け入れられる時代になっていると実感しています。

ーーーー今後の展望について教えてください。
現在の店舗は手狭なため、製造・加工・発送を担う新たな工房の設立を計画しています。そこに冷凍機も移設し、土産用の冷凍ケーキや栗ペーストの自社加工を進めていきたいと考えています。シーズン中は1日約20kg仕入れる栗ペースト(仕入れコストは年間1000万円以上)の自社製造の比率を高めることで、コスト削減と品質管理の両立を目指したい。将来的には、自ら植えた栗の収穫から加工まで一貫して行う体制を構築したいと考えています。
現在は売上の約7割がイートインですが、今後はふるさと納税やUber Eatsなどを通じた冷凍商品の販売も強化しつつ、店舗での体験価値を高めていきます。

私がこのお店で大切にしているのは、生産者とのつながりです。直接足を運び、対話を重ねながら信頼関係を築き、その価値を料理として表現していきたいと考えています。
また、地方では若者の流出や作り手の高齢化といった課題も深刻です。都市で経験を積んだ若者が「地元で挑戦したい」と思える環境をつくることも重要であり、その一つのモデルとして「栗のいえ」が存在できればと考えています。最終的には、笠間の栗を国内にとどまらず海外へと発信していきたい。その実現に向けて、地域の皆さんとともに歩み続けていきます。

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